階段の三角板をピッタリはめ込む

【伝統建築現場レポート】杉無垢材の階段 2014年8月7〜12日


面倒でも手を抜きません

出来上がった階段を見ても、板の接合部はどこもピッタリ。とても丁寧な仕事です。いろいろな現場を見学しましたが、若いからといって良治さんの仕事は他の現場に負けていないどころか、僕の目にはとても丁寧に見えます。この階段もその一つです。

一階の床工事中からこの無垢材の板が置いてあり、小口のメモを見ると階段と書いてありました。一枚板を使うのかぁと感動。ふんだんに無垢材を使ってくださって、うちってそんなに払ってたかなぁ?って心配になるほどです。
出来上がった階段がこちら、緩やかな階段で「まるも登れるように」が実現していそうです。犬バカに思いますが、まるが登れれば、人も楽なのです。夫婦それぞれの実家の階段、どちらも都会より広い家なのに急な階段でまるが登れなかったのです。高齢者の母たちが苦労していたのを見て、一つの目安に。
階段の横の板。ささら桁と言うそうです。ここも一枚板。どんなに太い木だったのでしょうね。木目を見ると大地に根を張っていた頃を想像してしまいます。しっかり根を張っていた幹がこれから我が家の昇り降りを支えてくれます。
これが今回一番注目の最上段の踏み板。三角形です。玄翁でトントンしているのは入れる溝より少し厚めの板にしている為です。入ってから広がるようにどんな所でもこうして端を叩いてから差し込んでいます。
梁に彫り込んだ溝。ここに三角板を差し込みます。今は少し板より差し込む箇所の方が短め。
ロウを塗ってすべりを良くして、差し込む準備。いかに入り難い状態で隙間を作らないようにしているか分かります。
仮に差し込んでみます。どのくらい溝を広げれば良いか確認していきます。無垢の木ですから、板の厚さが均等でないので、入らない箇所の確認も必要です。
仮に組んでみて検討付けた分をのみで彫り込んでいきます。彫り込みすぎると隙間が空くので、検討より少し少なめに削っているようです。
単純に真っ直ぐ広げるのではなく、差し込む時に板が動く動きを想定して彫り込んでいるようです。なので、角の奧の方が少し深め。
トントントンと叩いて板を差し込んでいきますが、実はこのあとも数回外してはのみで彫りコムを繰り返します。 トントントンと叩いて板を差し込んでいきますが、実はこのあとも数回外してはのみで彫り込むを繰り返します。
こうして出来上がった三角の踏み板。溝に差し込まれた所がピッタリ収まり、隙がありません。隙があったり、あとで埋めたりするのであれば、簡単なのです。
二桁ぎりぎりの僕が乗っても大丈夫。美しいつなぎ目の階段が出来上がりました。

大工の意気ですね

工事の途中で良治さんに質問してみました。「隙間が出来ていいんなら、簡単なんでしょ?」

答えは「そのとおりなんです。ギリギリで差し込まないときれいにならないので。」とのこと。
美しく見せるのには何事も細かな所のこだわりが大切なのですね。
とても手間のかかる箇所です。完成見学会の時はぜひ、ここのつなぎ目確認してくださいね。とてもきれいです。

隠れた所にも手を抜かない工事です。続きは次ページへ