時代劇のような土壁と木の家に住みたい!

わたしが土壁と伝統構法の家に行き着いた理由

小舞掻きワークショップの打ち上げ後、みんなでとりました。

いま建築中の我が家は東京の森で育った杉や檜の無垢材を使った、土壁と伝統構法による木組みの家。わたしも主人も、家を建てるならこういった家と、最初から目指していたわけではありません。伝統構法という言葉じたいも私たちがお願いした建築家さんに教えていただいて初めて知りました。その程度の認識しかなかったのです。

家を「買いたい」から「建てたい」へ!

さかのぼること数年前、最初は暇つぶしがてら、マンションのモデルルームや建売物件をまわることから、私たちの家造りへの模索は始まりました。いえ、最初は家を建てるというより、買うという認識の方が高かったと思います。相当数の物件を見たおかげで、それなりに物件を見る目も養われていった気がします。

最初に気がついたことは、どの物件のセールス担当者も、設備の説明は熱心にしてくれても、家そのものの説明はほとんど無く、さらり…。マンションのモデルルームにいたってはイメージ作戦でノルマのひとつとして販売してるな、と感じさせられました。私たちがもし20代の若さならそんな風には思わなかったかもしれませんが、ある程度の社会経験も経た歳になっていたので、適当なセールストークで何千万円もの買い物をさせてしまう雰囲気に強い反感を抱きました。「人生で一度の買い物をこんな風に売っていいの?」と感じたのです。

もうひとつ気になったのは新築独特のボンドの鼻のつくようなニオイでした。わたしも夫もそれが苦手で、しばらく建物の中にいると頭が痛くなってきます。そこに不安を覚えたことから、家の材料のことを考えるようになりました。そして集成材や石膏ボードなどの多用によって産業廃棄物を大量に出してしまう現代の家づくりに疑問を感じるようになり、無垢の木や漆喰などの自然素材の家を設計される建築家さんを探して、自分たちの家を建てたい、という思いを持つようになったのです。

私たちは、当初、集成材や無垢材のこともよくわかっていませんでした。色々と書籍を読んだり、調べたりしていくうちに、だんだんと興味が広がり、知識が増えていきました。

簡単に買えなかった家

それならば、とまずは予算と土地探しをと地域の不動産会社や無料建築相談へ出かけて行くと、自営業なので、サラリーマン家庭と違ってローンを組むのが難しいと色んな人から言われ続けました。担当者は頭から土地を持っていない自営業に注文住宅は無理!と決めてかかって、最初は私たちも建て売りでローン審査まで行ったこともあります。買えないと言われ、自力で必死で調べるしかなかったというのが実際のところです。

しかし、逆に考えれば、簡単に買えなかったからこそ、今の家づくりに行き着いた、とも言えます。どうすれば買えるのか、まず取引銀行に税務申告の書類を持参して相談、ローンのこと、建築家さん探し、土地探しも何もかも自分たちで調べて行動するのが当たり前になっていったので、結果的に、信頼しておまかせできる建築家さんに出会い、その出会いから素晴らしい大工さんや職人さんとも出会えました。振り返ってみても、マイナス要因と思えることが逆にプラスに働いたような気がします。

大切な家の材料のこと

家の材料のことに話をもどします。 もっとも重要な資材である木材のこと。無垢の木は本来、生き物であり、湿度によって膨張したり、反りが出たり、割れたりすることもあります。

実際に、この梅雨の間、我が家の和室の床はまだ畳が入っていないため、床板が膨張。波打ってました。施主の勘違いを心配した棟梁がきちんと説明……。わたしも主人も「板が膨張したんでっすね」ってちゃんと理解してました。このように木の方向を知りつくした大工さんでないと無垢の材木は扱えないことがわかりました。

それに対して、集成材は木をボンドで貼り合わせたものですから、反りも出ないし、割れたりすることもありませんし、木の方向などを考えずにプラモデルのように組み立てていけます。それは、大量にスピーディーに家を供給する、という現代に合っていたのでしょう。気がついたら、日本の木の家は大半が集成材で出来た家になっていました。大手ハウスメーカーが「木の家」とアピールする「木」もほとんどが集成材 で、無垢の木を使った建売メーカーやハウスメーカーは私たちの知っている限り東京では数える程しかありません。対応してもらえたとしても特別仕様なので値段がすごく高くなってしまう。それに、無垢の木を扱える大工さんじたいが少なくなっているのです。特にここ東京ではその傾向が激しいと聞いています。

私たちも最初は、集成材は色んな方向の木を貼り合わせているから無垢の木よりも丈夫で、しっかりした家が建って安心なのかなという認識でした。しかし、貼り合わせに使っているボンドがほんとに劣化しないかというと、環境や品質によっては短い期間で問題が起こってもいるそうです。

そもそも今の日本の家の価値は法律上、25年を過ぎると0円になります。家の価値を認められないから、ローンの担保としては土地が無ければ成り立たないそうです。25年を家の寿命と設定しているような法律ですから、ボンドで貼り合わせた集成材でも十分対応できるということになっているのでしょう。

対して、無垢の木は、反りや割れや扱いにくさ、といった面はありますが、昔の寺社仏閣が証明しているように、とても丈夫で、数十年で寿命をむかえるようなものでないことは歴史が証明しています。逆に質のよい無垢の木なら百年目からどんどん強くなっていくという話もあります。

阪神大震災で多くの木造の家が倒壊したということから、あたかも木造の家が地震に弱いかのような認識を与えてしまいましたが、実際に倒壊したのは木造だからではなく、高度成長期に入って出来た安い材料で突貫工事的に建てられた建物が多かったと聞きます。木造でもしっかり建てられた家はびくともしなかった物も多かった。現に、奈良の法隆寺は幾度の地震や自然災害をへても1300年以上、びくともしていません。日本人の大工さんが伝統構法で建てた建物はとても強いものだ、ということがわかりました。

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