途に倒れてだれかの名を呼び続けたことはありますか……

あぁ、懐かしき昭和絶望ソング① わかれうた —中島みゆきー 【20190324ちょっと改定】

途に座って飼い主の名を叫び続けていることありますよ。/(◉●◉)\


昭和歌謡曲考察

〜絶望ソングにみる希望 第1回

わかれうた

詞・作曲:中島みゆき 編曲:福井崚・吉野金次 


最近、ふと気づいたことがある。

聴いてるだけで気が滅入るような暗い、絶望的な歌がすっかり姿を消してしまっていたことに……。日本中隅なく探せばどこかにそんな曲もあるのかもしれないが、チャンネルをひねれば流れてくるような表舞台からはすっかり姿を消してしまっている。

世の中が、時代が、明るくなったから暗い曲は必要なくなったのか?いや、いくら今の日本が豊かになったからといって、上り調子だった昭和と比べて、今の時代が明るいとは到底思えない。日本は先進国の中では自殺率が高いし、年収200万、300万円以下での非正規雇用から抜け出せない若者も多い。若者の貧困率は非常に高く、貧困でなくとも購買意欲は昔に比べると下降気味で、不安定な未来に備えて貯蓄が趣味という若者も少なくないという……、そんな時代だ。

『励ましソング』に人は励まされるのか?

巷にあふれている歌はそんな彼らの心情を歌う歌というよりも、彼らを励ますような歌が多い。それもひとつの自然な流れなのかもしれない。奇跡を信じよう、前を向こう、1人じゃないよ、君は特別な存在、心配ないからね、などと真正面に励ますような歌が多い。我が家ではそれを勝手に「励まし」ソングと呼んでいる。

しかしある時、わたしは「励ましソングはほんとうに人を励ましているのだろうか?」と思った。落ち込んでいる人を励ましてはいけない、というのはよく聞くことだし、励まされると余計に辛い、落ち込む、という経験は誰にもあるだろう。それと似た現象が起こるのではないだろうかと思ったのだ。

慰め励ます『絶望ソング』

それとは対照的に、昭和に大ヒットした絶望的なほどに暗い曲は、意外にも聴く人々の心を逆に癒していたのではなかろうか。「ここまで酷くはないしなぁ〜、もうちょっと頑張ってみるかな」と思わせる力が潜んでいた、と勝手に解釈している。

私が生まれたのは昭和40年代初め。物心ついた時には、アイドルが歌う流行歌から、フォークソング、ニューミュージック、大人のムード歌謡、演歌にいたるまでから様々なジャンルの歌がいつもテレビのチャンネルをにぎわしていた。そして、80年代のバブルに突入するまではコンスタントに時代を代表するような「暗い曲」がいつもあったような気がする。

あくまでも私の記憶と印象に残っただけの独断的な選曲だが、このコーナーで取り上げてみます。

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